会話上手になる秘訣は「話す力」より「聞く力」にあった。
「会話が途切れると気まずい」「何を話せばいいのかわからない」「もっと話が上手になりたい」。
人とのコミュニケーションに、こうした悩みを感じたことはないだろうか。
会話が上手な人と聞くと、話題が豊富で、面白い話ができて、どんな相手とも自然に会話を続けられる人を想像するかもしれない。
しかし、本当に会話が上手な人は、必ずしも自分から積極的に話す人とは限らない。
相手の話をよく聞き、気持ちを理解し、相手が話しやすい空気をつくる。実は、こうした能力こそが良好なコミュニケーションの土台になっている。
今回紹介する永松茂久氏の『人は話し方が9割』は、日常生活や仕事における人間関係を見直すきっかけを与えてくれる一冊だ。
この記事では、本書の重要なポイントを整理しながら、私自身が感じたことや独自の視点も交えて解説する。
単に話し方のテクニックを覚えるだけではなく、人との付き合い方そのものを考えてみたい。
『人は話し方が9割』の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書籍名 | 人は話し方が9割 |
| 著者 | 永松茂久 |
| 出版社 | すばる舎 |
| 発売日 | 2019年9月14日 |
| ジャンル | ビジネス・コミュニケーション |
| ISBN | 978-4-7991-0842-0 |
本書は、話すことに苦手意識を持つ人や、人間関係をもっと円滑にしたい人に向けて、日常で実践できるコミュニケーションの考え方を紹介している。
『人は話し方が9割』の要約|押さえておきたい5つのポイント
1. 会話への苦手意識は、自分を認めることから変えられる
人前でうまく話せなかった経験や、会話中に失敗した経験が原因で、話すこと自体に苦手意識を持ってしまう人は少なくない。
一度の失敗を引きずり、「自分は話すのが下手だ」と決めつけてしまうと、次の会話でも緊張しやすくなる。
本書では、こうした状態から抜け出すために、自分や相手を否定しないことの大切さが説かれている。
相手の意見を頭ごなしに否定せず、安心して話せる環境をつくる。そして、自分自身も必要以上に否定しない。
会話に正解を求めすぎず、まずは自分の言葉で伝えてみることが大切だ。
話し方を改善するためには、テクニックを身につけるだけでなく、失敗を恐れずに話せる心理的な余裕も必要になる。
2. 相手の話を広げる「拡張話法」
本書で紹介される重要なテクニックの一つが、相手の話を広げるための「拡張話法」だ。
これは、自分が新しい話題を次々と提供するのではなく、相手が話した内容をきっかけに会話を発展させていく方法である。
基本となるのは、次の5つの流れだ。
感嘆 → 反復 → 共感 → 称賛 → 質問
例えば、相手が「先週、旅行に行ってきたんです」と話した場合を考えてみよう。
- 感嘆:「えっ、旅行に行ったんですか!」
- 反復:「旅行に行かれたんですね」
- 共感:「それは楽しそうですね!」
- 称賛:「行動力がありますね!」
- 質問:「どこに行かれたんですか?」
このように相手の発言を受け止め、反応し、質問を重ねることで、会話を自然に広げられる。
重要なのは、質問を機械的に繰り返すことではない。
相手の話に本当に興味を持ち、知りたいと思う気持ちを持つことだ。
3. 無理に話そうとせず、話しやすい人との会話から始める
会話が苦手な人ほど、沈黙を避けようとして無理に話題を探してしまうことがある。
しかし、すべての沈黙を埋める必要はない。
話すことに慣れていない段階で、苦手な相手との会話に無理に挑戦しても、かえって自信を失ってしまう可能性がある。
まずは、自分が安心して話せる相手とのコミュニケーションを増やしてみる。
会話が弾んだ経験を積み重ねれば、少しずつ話すことへの抵抗も小さくなっていく。
また、流暢に話すことだけが会話の上手さではない。
自分の気持ちを伝えようとする姿勢や、相手に対する思いやりの方が重要な場面も多い。
沈黙を恐れて言葉を詰め込むよりも、落ち着いて相手と向き合うことを意識したい。
4. 相手を不快にさせない言葉選びを意識する
コミュニケーションでは、何を話すかと同じくらい、何を話さないかも重要になる。
本書では、相手を否定する言葉や、場の空気を悪くする発言についても注意が促されている。
例えば、「でも」「だって」「どうせ」「ダメ」といった否定的な言葉を頻繁に使うと、相手は自分の意見を受け入れてもらえないと感じやすい。
また、相手との関係性を考えずに、下ネタや男女関係などの踏み込んだ話題を持ち出すことも避けたい。
さらに注意したいのが、相手の話を自分の話にすり替えてしまうことだ。
相手が経験を話している途中で、「自分も同じ経験がある」と話を奪ってしまうと、相手は十分に話せなくなってしまう。
相手が話し終えるまでは、まず聞くことに集中する。
会話を盛り上げようとするあまり、自分の話ばかりにならないようにしたい。
5. 相手を動かしたいなら、自分が楽しむことから始める
誰かに協力してほしいとき、熱意を持って説得すれば必ず相手が動いてくれるとは限らない。
自分の都合を優先して参加を求められると、相手は負担を感じてしまうこともある。
そこで大切になるのが、自分自身がその活動を楽しんでいる姿を見せることだ。
本人が楽しそうに取り組んでいる姿を見ると、周囲も自然と興味を持ちやすくなる。
無理に参加を迫るのではなく、相手が自分から関わりたいと思える環境をつくる。
人を動かすためには、言葉で説得することだけが方法ではないのだ。
私の感想|マシンガントークをする人は、自信がある人か、自信がない人か
ここからは、私自身の考察になる。
私は、途切れることなく話し続ける人には、大きく分けて2つのタイプがあると考えている。
一つは、自分の知識や会話の引き出しに自信がある人。
もう一つは、沈黙に対する不安が強い人だ。
前者は、頭の中に十分な知識があり、その場の状況に応じて自然と言葉が出てくる。
自分の考えを表現することに抵抗がなく、話すこと自体に楽しさを感じているのだろう。
一方、後者は会話が途切れることを恐れている。
何か話さなければならないという焦りから、必死に話題を探し続ける。その結果、相手が求めていない話をしてしまったり、会話の流れに合わない発言をしてしまったりすることもある。
もちろん、すべてのマシンガントークがこの2種類に分類できるわけではない。
ただ、同じように話し続けている人でも、その背景にある心理は異なるのではないだろうか。
ここで私が重要だと考えるのは、話す能力とコミュニケーション能力は必ずしも一致しないということだ。
どれだけ知識が豊富でも、相手の話を聞かなければ、一方的な情報発信で終わってしまう。
反対に、話すことが得意でなくても、相手の話を理解し、適切な反応ができる人は良好な関係を築ける。
話すことが得意な人ほど、あえて聞くことを選択する余裕を持つべきなのだと思う。
ビジネスでは「話すこと」より「相手を知ること」が重要
この考え方は、特にビジネスの場面で重要になる。
友人との食事や飲み会であれば、目的のない雑談にも十分な価値がある。
しかし、仕事上の打ち合わせや商談では、相手にも貴重な時間を使ってもらっている。
相手は何らかの目的を持って、その場にいる。
課題を解決したいのか、利益を生み出したいのか、必要な情報を集めたいのか。
そのような相手に対して、自分の身の上話や、時間を埋めるためだけの雑談を続けても、必ずしも良い結果にはつながらない。
むしろ、最初に相手の状況や考えを聞くことが重要になる。
- 現在、何に困っているのか
- どのような結果を求めているのか
- 何を優先して判断しているのか
- どのようなことに不安を感じているのか
こうした情報を得ることで、初めて相手にとって価値のある提案ができる。
例えば、商品やサービスを提案する場合でも、相手の悩みを理解せずに商品の魅力ばかり説明していては、的外れな営業になってしまう。
一方、相手の話を十分に聞き、その人が本当に必要としている情報を伝えれば、提案の受け取られ方は大きく変わる。
つまり、聞くことは単なる気遣いではない。
相手を理解し、必要な情報を得て、次の行動につなげるための重要な手段なのだ。
本当に会話が上手な人になるために必要な3つのこと
ここまでの内容を踏まえて、私が考えるコミュニケーションの基本を3つにまとめたい。
1. 自信がないなら知識を身につける
会話に自信がない場合、まずは知識を増やすことから始めてみる。
幅広い知識があれば、相手の話を理解しやすくなり、質問や返答の選択肢も増える。
何も話せないという不安を減らすためにも、知識を蓄えることは有効だと思う。
2. 自分が話すことより、相手を知ることに集中する
知識が増えたからといって、それをすべて披露する必要はない。
相手が何を考え、何を求めているのかを知ることに集中する。
話しやすい雰囲気をつくり、相手の言葉を遮らずに聞く。
その積み重ねが、信頼関係を築くことにつながる。
3. 得た情報をもとに、自分の言葉で伝える
相手の話を聞いたら、そこで得た情報をもとに自分の考えを伝える。
相手が求めていることに対して、自分の知識や経験を活用する。
ただ話すのではなく、相手にとって意味のある話をすることが大切だ。
この順番を意識するだけでも、会話の質は変わってくるはずだ。
『人は話し方が9割』はどんな人におすすめ?
本書は、特に次のような人におすすめしたい。
- 人と話すことに苦手意識がある人
- 初対面の相手との会話が続かない人
- 沈黙が怖く、つい話しすぎてしまう人
- 職場の人間関係を改善したい人
- 営業や接客で相手との信頼関係を築きたい人
- 家族や友人とのコミュニケーションを見直したい人
- 自分の話し方に自信を持てない人
反対に、専門的な交渉術や高度なプレゼンテーション技法を学びたい人には、本書だけでは物足りない可能性がある。
本書の魅力は、難しい理論を学ぶというより、日常の会話で実践できる基本的な考え方を身につけられる点にある。
まとめ|話し上手を目指すなら、まずは聞き上手になろう
『人は話し方が9割』は、会話に苦手意識を持つ人に、コミュニケーションの基本を教えてくれる一冊だ。
本書を通じて考えさせられるのは、会話は自分の能力を披露する場ではなく、相手との関係を築くためのものだということ。
そして、私自身が特に大切だと感じたのは、話す能力があることと、話すべき場面を判断できることは別だという点だ。
知識や経験が豊富な人ほど、自分の話をしたくなるかもしれない。
しかし、そこで一歩引いて相手の話を聞くことができれば、相手の考えや求めているものを知ることができる。
自信がなければ知識を身につける。
その後は聞くことに徹する。
そして、得た情報をもとに話す。
私は、この順番こそが、仕事でもプライベートでも役立つコミュニケーションの基本だと考えている。
話し方を変えたいと思っている人は、まず自分がどれだけ話しているかではなく、相手の話をどれだけ聞けているかを振り返ってみてほしい。
本当に会話が上手な人は、たくさん話せる人ではなく、相手に合わせて話すことも聞くことも選べる人なのではないだろうか。
『人は話し方が9割』を読んでみたい方へ
この記事で紹介した内容は、本書の学びの一部だ。
会話の苦手意識をなくしたい人、人間関係を少しでも良くしたい人、仕事でのコミュニケーションを改善したい人は、実際に本書を手に取ってみてほしい。
日常の何気ない会話を見直すきっかけになるかもしれない。

